志賀浩二 「広い世界へ向けて 解析学の展開」

大人のための数学シリーズ4番目。
本シリーズでは最初に5番目の位相空間、6番目の測度論とルベーグ積分のお話しを先に読んでしまった。
普通なら関数解析を扱っているらしい7番目にいくべきところであるが、ちょっと後戻り。
本書は第1部と第2部に分かれ、第1部は微分の視点(複素解析)、第2部は積分の視点(フーリエ級数)のお話し。

第1部 複素平面→複素平面 という写像がお相手。
  ここに微分可能というきつーい制約を入れると、モノゴトがたいへん綺麗になって、あとは線積分を導入すれば
    コーシーの積分定理
    正則関数の積分表示式
    整級数展開定理
    一致の定理、最大値の原理、等角写像
  と流れるように進む。ホント綺麗だ。

第2部 こちらで相手する関数は 実数→実数 で、実解析と呼ばれる。
  メインとなるのは「フェイエールの定理」の証明である。
  「フェイエールの定理」とは
     区間[-π,π]の連続関数は、それに一様収束する三角多項式で近似できる 
  というもので、連続ならばどんな関数でも近似できるというのだから極めて一般的な基本定理。
  それが意外にも初等的に証明できてしまう。
  やり方は、対象とする関数fのフーリエ級数のn項まで取った部分和snの算術平均
    Sn=(s1+s2+s3+・・・+sn)/n
  をつくると、n→∞ で Sn→f となるというもの。
  フーリエ級数そのものは、nを増やすとfに近づいていくというイメージがあるが、それを途中で打ち切ったモノの算術平均を作る、という発想はどこから出てきたのだろう?
  級数同士を足し算したりすると、ぐちゃぐちゃになりそうだが、巧みに式変形すると、あら不思議、ひとつの積分にまとまってしまう。まるでオイラーさんの手品のよう。
  関数がC1級だとフーリエ級数そのもので近似できる、ということで、そっちの証明は高木貞二の解析概論にあるそうだから、これを機会に古典的名著「解析概論」を読んでみよう。
    
本書で強調されているのは、関数を見る2つの視点-複素解析へつながる微分的な視点と、フーリエ級数・関数解析へつながる積分的視点-だが、こういう風な大きな2つの流れというのはあまり意識したことがなかった。
たまたま持っている大学の教養課程の解析の教科書「解析入門I, II」を見ても、最終章の複素解析こそ華といった感じで実解析の方はほとんど出てこない。 ま、そっちの方は微分方程式の課程で出てくるのかも知れないが、大きな流れを見る視点を持つと何となく余裕の気分が出てきて、さすが「大人のための・・・」である。   
  
  

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